羅臼昆布産地とつながる・こんぶをもっと知る!オンラインイベントレポート
8月、昆布漁真っ盛りの羅臼を発信地として、全国の昆布大使と協賛企業に向けてのズーム交流会が開かれました。
羅臼漁業組合のHPからも見られる、羅臼の昆布漁を紹介する動画に始まり、昆布漁の道具や成型の仕方を番屋から、漁師自ら説明してくださいます。
スマホの縦画面には収まりきらない長い長いマッカで、どうやって昆布を採るかの話。
見ているみんなは、凪の時とはいっても潮の流れと水圧のあるなかで、
昆布を巻き付けて、岩からぶちっと取ることを想像します。
お店で見る羅臼昆布になるまでの成型の仕方を見て、赤葉という切り落としたひらひらの部分をどう使うのか興味を持った昆布大使たち。
漁師への質問が飛んでいきます。
その漁師といえば、天然昆布部会長の井田一昭さん。
羅臼昆布の良さと漁師の思いをわかりやすい言葉に乗せて、長年こどもにも大人にも伝えていらっしゃいます。
昆布大使も同行させていただいた2018年の昆布協会の産地視察のときの井田さんはかっこよかった!港で待つわたしたちの前にさっそうと昆布船で沖から現れて一言。「一生懸命昆布を採りますから、みなさんは一生懸命売ってください。お願いします!」その場にいた全員が、羅臼昆布を一生懸命売ろうと思った瞬間でした。
さて、質疑応答では「どうやって赤葉を食べるのか」「漁師はどんな風に羅臼昆布を使うのか」など。
井田さんは赤葉で昆布締めを作ります。「締めるのは1時間半くらいな、それ以上だとしょっぱくなるからな」
お味噌汁には羅臼昆布を後入れします。「できた味噌汁に入れるのよ。具にもなるしな。うまいぞ」
本州の人たちには衝撃のお答えも。
「地元では出汁をとった後の昆布はどうしますか?」「佃煮にするっていうひともいますけど・・捨てます。」
えええええーっ!!
それだけ豊富だったってことなんです。北海道では以前は昆布は買うものではなくもらうもの。親戚から、親戚の親戚から、友達からなどなど。巡り巡って産地はわからないおいしい昆布が大抵の家にありました。平成の中頃までは(遠い目)。
大石圭一先生が著書「昆布の道」の中で北海道型消費は出汁をとって捨てる、と書いていらっしゃるので、良かったら読んでみてください。
そして、井田さんの締めの言葉は「羅臼昆布は、99.9%美味しい。残りの0.1%はあなた方買った人が、どれだけ美味しくするか。漁師はあなた方に託しているんです」
漁師と使い手が、協働して羅臼昆布の味を最高に生かす、素敵じゃありませんか。
質疑応答が終わるころには、みんなが井田さんの、羅臼昆布のファンになっていました。
この中でわたしが気になったのは、ウニの放流と昆布の関係でした。
人気もののウニは、昆布が大好き。昆布がおいしい海はウニもおいしいんです。南茅部で天然真昆布が採れなくなってしまった原因のひとつにウニの放流が考えられています。
天然昆布が少なくなったところにウニが多量に入り、ウニだって生きるために食べるので昆布を求めて移動して食い尽くしてしまい、海の森はなくなって海枯れとなります。昆布がないからウニも空っぽ。
漁業者たちは、天然昆布をよみがえらせようと、ウニを駆除したり、岩盤を掃除したり、一生懸命頑張っているのです。
羅臼ではどうなのかなと気になっていたのでこの機会に聞いてみました。
羅臼で放流されているのはバフンウニ。道南で困ったことになっているのとは違う種類です。
井田さんからは、バランスが取れているから大丈夫との答えで、ほっとしました。人間が岩盤掃除をしなくても、流氷が岩盤をそぐように掃除してくれることも良い点でした。
世界遺産である知床半島に位置する羅臼は、森林開発から免れています。沖合の海洋深層水の冷たさは海温の上昇の速度を遅くしているのかもしれません。
それでも海はつながっていて、人間が意識して守らないと壊れてしまい、人間に恵みを与えなくなります。
羅臼の海がずっと先の未来まで大事に保たれるように、羅臼昆布の海の恵みと一体の漁師の工夫と技術がずっと続くように。井田さんの言葉を聞きながら海のこと、未来に続く昆布漁のことを思ったのでした。
現地に行かなくても繋がれる交流会を開催してくださってありがとうございました。次回は昆布大使だけでなく、興味のある人が参加できたらいいなと思いました。